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【報告】特別講義「実践真宗学のフロントライン」

2024.10.09

鍋島直樹本学教授

2024年10月9日(水)11:00より大宮学舎東黌101教室において特別講義「実践真宗学のフロントライン」が開催された。最初に鍋島直樹本学教授による趣旨説明・講演の後、実践真宗学研究科に所属する二名の大学院生による実習報告が行われた。

①「ハワイにおける真宗伝道の実践」長岡阿衣璃

長岡阿衣璃氏

1889年より開始された西本願寺のハワイ伝道は、現在32寺院、38名僧侶、メンバー(門徒)4000人によって活動されている。ハワイ教団ではどのような実践活動がおこなわれているのか、長岡氏は現地実習を踏まえてその一例を紹介・報告された。

■プロジェクトダーナ

モイノリ本願寺から始まる年寄りや障害者を支援するための活動

「ダーナ(布施)」の精神をもとに開始、今ではキリスト教やユダヤ教など宗派を超えて活動が広まっている。理念は「self less giving」見返りを求めないことである。

■チャプレン

病院や施設でケアを行う僧侶。チャプレンのブレイン比嘉氏は「不完全な伴走者」と表現する。

後述の臨床宗教師もここに該当する。

■ポリスチャプレン

警察官と共に行動する僧侶。警察官と同じ制服を身につける。被害者の話を聞いたり、時には警察官のケアも行う。被害者の遺族に事件を伝えることなどもある。

Peace day, Sunday service, Living tresuresなどハワイ教団の伝道活動は他にもいくつもある。最後に長岡氏は「ハワイでの活動例を通して、受講者に少しでも真宗伝道に興味関心が高まる機会となってもらえれば幸いである」との言葉で発表を結ばれた。

長尾菜摘氏

②「実践に学ぶ臨床宗教師」長尾菜摘

長尾氏は実践真宗学研究科のプログラムである「臨床宗教師」課程を受講した経験を通して、実践真宗学で学ぶべきテーマや問題提起を行った。

まず臨床宗教師とは、苦悩を抱える人々に寄り添う傾聴する宗教者である。傾聴とは臨床宗教師において重要な姿勢であり、その人の零れ落ちてくる話を拾い、その人の立場になって理解しようとする姿勢のことである。

医療現場や被災地の仮設住宅、福祉施設など悩みや苦しみを抱えた人に対して、傾聴を通してグリーフ(悲嘆)ケアを行うことが活動の一環である。

臨床宗教師と宗教者の違いは、「公共施設で活動を行う」「布教・勧誘を目的としない」「他宗教者との連携」「患者の宗教、価値観を尊重」「多職種連携」が挙げられる。自身の信仰を押しつけず、傾聴する相手の信仰や価値観を尊重することが特徴である。実践真宗学では、あそかビハーラ病院の終末期医療現場や東北の被災地での現地実習を行う。

長尾氏は最後に「本報告を通して寺院出身ではない、僧侶ではないという方も臨床宗教師や実践真宗学に興味を持ってもらえれば幸甚である」との言葉で締めくくられた。

集合写真