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【報告】特別公演「とびだせビャクドー!ジッセンジャー」

2023.10.31

【開催日時】2023年10月25日(水)9:15~10:45

【開催場所】龍谷大学大宮学舎東黌101教室

     ※龍谷大学文学部「真宗学概論A2」(担当:鍋島)の特別講義として開催。

【主催】龍谷大学世界仏教文化研究センター 人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター(CHSR)

【協力】龍谷大学大学院実践真宗学研究科

【概要】

公演の風景

 本公演は、ヒーローショーを用いた視聴覚伝道「とびだせビャクドー!ジッセンジャー」(以下、ジッセンジャー)の観劇を通して、世界の苦悩に向き合う仏教の智慧と慈悲について学ぶことを目的とし、主として「真宗学概論A」の受講生たちを対象に開催された。

 ジッセンジャーは、本学大学院実践真宗学研究科が手がける布教伝道活動の一環であり、2013年度より有志によってその活動を開始する。ジッセンジャーは幼稚園や保育園、寺院の日曜学校に通う子どもたちが主たる伝道対象であり、「ヒーローショー」という子どもに親しみやすいテーマを基に、映像・舞台・法話という3つのファクターを用いて行われる青少年教化活動である。

 では何故「ヒーローショー」である必要があるのか。それには①新しい視点②安心③つながり、の3つの意義があるという。

①「新しい視点」とは、ジッセンジャーはいわゆる「勧善懲悪」を題材とせず、「そもそも”悪”とは何であるか?」という仏教的な視点である。この視点に立脚することにより、従来のヒーローショーになかった、参加者の仏教的な価値観の創出が期待されるのである。

②「安心」とは、阿弥陀仏すなわち「自分のことを見守ってくれる存在」がいることへの「気づき」である。劇中に登場する阿弥陀仏は、あらゆる者に対し分け隔てなく接し、決して見捨てることがない存在として描かれる。このような存在を通して参加者に「安心」を与えることが期待されるのである。

③「つながり」とは、「ヒーローショー」という1つの空間を参加者全員が共有することで「ムラ」や「イエ」のつながりが希薄となりつつある現代社会において、「一人じゃない」「孤独じゃない」ということを体感してもらうことである。

集合写真

 本公演もこれら③点を反映した内容が展開されており、登場人物であるヒーローの「ビャクドー」、怪人「ジャカツ」、人間「ゆうち」の三者三様の主張が、実は同じ悩みを共有した、いわば「凡夫」であり、それぞれが阿弥陀仏の慈悲の中に摂めとられていることに気づかされていくのである。

講義後に配布したコメントカードからは、

受講生と鍋島直樹教授

「仏さまのように、見てくれている人は見てくれているんだなと思えて、自分なりに生きていきたいなと思いました」

「親しみやすい劇で感動しました。人間の心の闇から生まれた<ジャカツ>の姿には自分の心にもあてはまるところがたくさんありました」

「たいていのヒーローショーは悪なる敵が倒されて終わるので、悪が倒されずに和解しておわるのは新しく面白かったです」

といった感想が寄せられた。受講生にとっても仏教的価値観とは何かを考える上で、示唆に富む内容であったことは想像に難くない。

(文責:西村慶哉)