Center for Humanities, Science and Religion (CHSR)

人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター

センター概要

〇研究目的

応用研究部門「人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター(Center for Humanities, Science and Religion 略称CHSR)」は、仏教・浄土教を機軸として、現代世界の苦悩や悲嘆に全人的に寄り添い、社会の困難を和らげようと努力する実践的研究を推進する。宗教は世界の苦悩にどのように対処することができるのだろうか。世界の課題解決に取り組むために、仏教や親鸞の教学的研究と、医療福祉学、心理学、社会学、倫理学、教育学、経済学、歴史学など諸科学とが協力し、融合的研究を進める。生老病死の苦悩を超える仏教の智慧と慈悲に学び、浄土教の救済観を現代に応用する研究をめざしている。
人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センターは、応用研究部門の常設研究センターである。また、応用研究部門には時限的な「萌芽的公募研究」(共同研究1件、個人研究1件)を置く。

〇建学の精神に基づいた研究教育の推進

龍谷大学は建学の精神に基づき、生きとし生けるもの全てを迷いから悟りに転換させたいという阿弥陀仏の誓願を依りどころとし、その願いに生かされ、真実の道を歩まれた親鸞の生き方に学び、「真実を求め、真実に生き、真実を顕かにする」ことのできる人間育成をめざしている。そのために「人間・科学・宗教」の三領域が融合する新たな知の創造に努め、平等、自立、内省、感謝、平和に結びつく研究に取り組んでいる。人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センターは、それを具現化しうるセンターである。

〇「人間・科学・宗教」の連携による学際的研究と新たな知の創出 

およそ「人間」とは、仏教において生きとし生けるものの一員、衆生であり、迷いと罪業を重ねて生死輪廻する凡夫でありつつ、自己中心的な傲慢さを反省し、世界の安穏を願って生きようとする菩薩的存在でもあるとされる。
 「科学」とは、現象の構造や法則性を解明し、その成果を社会の技術や政策に反映させるための知見である。その科学の応用には、生活向上や生命の保護に寄与する光の側面と、核兵器や環境破壊などに悪用される影の側面とがある。
 「宗教」とは、窮極的危機に際して、自己を照らし生きる意味に気づかせ、人類の歩むべき方向を示す羅針盤のような働きを有する。宗教とは自己の姿を映す鏡であり、大悲に照らされて、人類の光と闇をふりかえり、宗教と科学とが対話協力しながら世界を安寧に導いていくことが求められる。 
 ふりかえってみると、20世紀における「科学」的成果は高度な文明を生み出し、世界の経済的発展をうながした。人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センターは、21世紀まで「科学」的成果がもたらした光の側面とともに、環境破壊、核兵器、戦争などに象徴される闇の側面をふりかえり、仏教の智慧と慈悲を基盤にして、世界の抱える苦悩や悲嘆に向き合い、仏教・浄土教が世界の課題解決のために貢献しうる道を探求する。具体的には、人間のより深い価値、すなわち、命の無常さに思いをいたし、生きとし生けるものへの慈しみを育む死生学を研究する。一人ひとりの生命を尊重する智慧と慈悲を礎にして、世界の安穏と平和につながる研究教育を次世代に継承していきたい。

〇人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センターの歴史・採択実績

2002年に文部科学省私立大学学術高度化推進事業「仏教生命観に基づく人間科学の総合研究」採択。以来、文科省プロジェクト採択3回、龍谷大学学術高度化推進事業採択1回を経て、2016年度より世界仏教文化研究センター応用研究部門 常設研究班を担う。

2002年度~2006年度 
文部科学省私立大学高度化推進事業「仏教生命観に基づく人間科学の総合研究」

2007年度~2009年度 
文部科学省私立大学高度化推進事業「仏教生命観に基づく人間科学の総合研究」

2010年度~2012年度 
文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業
「死生観と超越 仏教と諸科学の学際的研究」

2013年度~2015年度 龍谷大学選定研究プロジェクト 
「仏教・浄土教を機軸としたグリーフサポートと救済観の総合的研究」

2016年度~ 世界仏教文化研究センター応用研究部門・常設研究センター
「世界の苦悩に向き合う智慧と慈悲―仏教の実践的研究」

2020年度 第三者評価4.5

〇研究課題

(1)仏教を機軸とした宗教教育への継承と開発(他者への思いやりや生命への慈しみを育む情操教育、道徳と宗教、宗教教育、宗教多元時代の宗教間教育)
(2)宗教と医療・社会福祉の連携による患者・家族の全人的支援(死生学、緩和ケア、グリーフケア、臨床宗教師養成教育)
(3)仏教と社会実践(大震災復興支援、自殺対策・自死遺族支援、地域寺院活性化)
(4)仏教と環境保護・経済(縁起的生命観の活用、地球と人類の持続可能性、仏教SDGs)
(5)平和のための宗教間協力と宗教間対話(interfaith partnership for peace)
(6)国際・応用研究部門共同研究「親鸞浄土教と世界の研究班」 
方法:米国仏教大学院現代真宗学研究所(Center for Contemporary Shin Buddhist Studies, Institute Buddhist Studies, Berkeley)との国際共同研究
(7)応用研究部門「紛争解決研究班」 2021年度~
目的 本研究班の目標は、グローバリゼーションの進展に伴う様々な紛争解決のために仏教学と社会科学・人文学の共同による主体性と関係性についての高度な研究を進めることにある。これは本学の特色を活かした高度な研究と言え、特にその中でも仏教における関係性と主体構築を鍵概念としてグローバルな諸問題の分析を行う。
(8)応用研究部門「ジェンダー研究班」 2021年度~
目的 本研究班は、ジェンダーの視点に基づく仏教と世界の諸宗教との比較・対話を通して得られた知見によってジェンダー平等の実現に寄与することを目的とする。