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【開催報告と御礼】童謡詩人金子みすゞ展

2024.09.22

2024年6月5日(水)より26日(水)まで、本学大宮学舎本館1階展観室におきまして、展示会「みんなちがって、みんないい。童謡詩人金子みすゞ展~まなざしの源泉~」を開催いたしました。併せて全3回の記念講演も行い、数多くの方々に足をお運びいただきました。この場を借りて謝意を申し上げます。開催の詳細について下記の通り報告いたします。

■展示期間

  2024年6月5日~7日、11日~14日、18日~23日、25日、26日(いずれも10:00~16:00)

■来場者数

  854名

■特別講演

 (1)6月5日(水)11:00~12:00

  矢崎節夫氏「みんなちがって、みんないい。~みすゞ甦りとまなざし~」(本館2階講堂)

  (※詳細はこちらをご覧ください)

 (2)6月13日(木)13:30-15:00

  鍋島直樹氏「金子みすゞ~いのちへのまなざし~」(東黌209教室)

  (※詳細はこちらをご覧ください)

 (3)6月19日(水)11:00-12:30

  柴崎大輔・北尾知子両氏「みすゞの読んだアンデルセン童話」(東黌101教室)

  (※詳細はこちらをご覧ください)

■各展示室の概要

 本展示会は、現在世界中に広がり、親しまれている童謡詩人 金子みすゞの作品がどのようにして生まれたのか、その源泉を辿ることをコンセプトに開催されました。各部屋ごとに展示品の概要を紹介します。

 (北)第一室 みすゞを育んだもの~本・お仏壇・報恩講~

  第一室では、みすゞが幼少期に触れあった児童書や仏壇を中心とした展示が行われました。

 みすゞの幼少期は大正デモクラシーの時代でもあり、児童書発展の時期でもありました。本屋を営んでいたみすゞは幼少期より児童書に接する機会も多く、後のみすゞ作品にも大きな影響を及ぼしたことが窺えます。加えて、みすゞの故郷である山口県大津郡仙崎(現長門市)は、浄土真宗や浄土宗などの信仰の篤い地域でもありました。みすゞの家にも仏壇があり、本尊の阿弥陀さまに掌を合わせていたことが、みすゞが遺した数々の作品からも窺うことができます。みすゞの中で阿弥陀さまの存在は決して小さなものではなかったでしょう。

 そこで、第一室では、金子みすゞが直接手に取って読んでいたであろう、明治・大正期に刊行されたアンデルセン童話などの児童書や、『少年園』『少女世界』といいた少年誌・少女誌、『お伽絵解』『日本昔噺』といいた絵雑誌・絵本を中心とした展示が行われました。加えて、金子みすゞが掌を合わせていたであろう近代期の浄土真宗の仏壇も展示されました。

(主な展示品)
女学生時代のみすゞ写真(パネル)
仙崎マップ JULA出版局 令和5年5月
仙崎名勝絵葉書 昭和初期 5枚+2枚
お仏壇(イメージ展示品) 昭和初期 丸三仏壇店
金子家過去帳(イメージ展示品) 龍谷大学
新譯ロビンソン漂流記 平田禿木(平田喜一)訳 冨山房(模範家庭文庫) 大正6年12月24日
アンデルセン御伽噺 長田幹彦訳 冨山房(模範家庭文庫) 大正6年8月24日
アンデルセン童話全集(第一巻) 楠山正雄訳 新潮社 大正13年9月3日
アンデルセン童話 金の星社編集部 金の星社(世界少年少女名著大系) 大正14年10月13日 大正15年6月25日3版
日本昔噺 第壱編 桃太郎 巌谷小波編 博文館 明治27年7月11日 明治29年10月5日7版
西條八十童謡全集 西條八十 新潮社 大正13年5月25日
日本童謡集 1925年版 童謡詩人會編 新潮社 大正14年6月17日

(中)第二室 金子みすゞの手帳

第二室では、金子みすゞの遺した3冊の遺稿手帳のレプリカが展示されました。金子みすゞは20歳で「童謡」を書き始めます。これまで抑えられていたものを噴き出すかのように、作品を生み出します。しかし、生前発表されたのはわずかに90編ほどでした。しかし、みすゞの没後50年が経過した時、矢崎節夫氏がこの手帳の存在をつきとめ、512編ものみすゞ作品が「甦り」ました。今ではよく目にする「私と小鳥と鈴と」「こだまでしょうか」「星とたんぽぽ」もこの時に甦った作品たちです。このように第二室では、これらの作品が書かれたパネルとともに、遺稿手帳を観覧していただきました。

(主な展示品)

美しい町(レプリカ)
空のかあさま(レプリカ)
さみしい王女(レプリカ)

(南)第三室 みすゞ作品の掲載誌と展開

 第三室では、金子みすゞが作品の投稿を行っていた『赤い鳥』などの掲載雑誌から、現在世界中で出版されているみすゞの書籍まで、みすゞ作品の展開をテーマにした展示が行われました。

みすゞは大正12(1923)年9月に作品が投稿雑誌に掲載されると、瞬く間に投稿詩人のあいだで話題となりました。西條八十も、みすゞの才能を認める一人でした。みすゞ死後、彼女の作品は次第に忘れられていきましたが、それでも童謡仲間の間では伝説のように語り継がれていきました。しかし、先述の通りに遺稿手帳の発見により金子みすゞ作品が甦ると、みすゞ作品は瞬く間に広がり、現在では世界一五ヵ国語に翻訳され多くの人に親しまれています。

 第三室では、金子みすゞ作品を①みすゞ作品が掲載されていた頃、②みすゞが幻の童謡詩人として語り継がれていた頃、③現在の世界中で親しまれていく様子の三期に分けて展示がなされました。

(主な展示品)

みすゞの着物(再現)
琅玕集(レプリカ)
童話 大正12年9月号 第四巻 第九號 コドモ社 大正12年8月1日 金子みすゞ「お魚」「打出の小槌」掲載
金の星 大正12年9月号 第五巻 第九號 金の星社 大正12年9月1日 金子みすゞ「八百屋のお鳩」掲載
赤い鳥 大正13年10月号 第十三巻 第四號 赤い鳥社 大正13年10月1日 金子みすゞ「入船出船」掲載
日本童謡集 1926年版 童謡詩人會編 新潮社 大正15年7月7日 金子みすゞ「大漁」「お魚」掲載
児童文芸 1982年秋季臨時増刊 増刊12 日本児童文芸家協会 ぎようせい 昭和57年9月25日 矢崎節夫「金子みすゞ―見つかった三冊の遺稿集と写真」掲載
小学国語5下 ひろがる言葉 教育出版 矢崎節夫「みすゞさがしの旅」掲載
金子みすゞ いのちへのまなざし 鍋島直樹 古荘匡義編 龍谷大学 人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター 2012年7月4日
Something Nice(英語) D.P.ダッチャー訳 JULA出版局 1999年 英語
ARE YOU AN ECHO?(英語オリジナル絵本) デーヴィッド・ジェイコブソン作 サリー・イトウ 坪井美智子訳 チン・ミュージック・プレス 2016年 英語
わたしと小鳥とすずと(韓国語) 徐承周訳 図書出版小花 2006年 韓国語
金子みすゞ童詩全集「明るい方へ」(中国語) 呉菲訳 浙江少年儿童出版社 2023年 中国語
「ほしとたんぽぽ」「おひさん、あめさん」「なしのしん」(中国語) 猿渡静子訳 新星出版社 2017年 中国語
わたしと小鳥とすずと(ペルシャ語) ジャヘドザデ・べへナム ディバーイエ 2011年 ペルシャ語
花のたましい(スペイン語) 星野由美 マリア・ホセ・フェラーダ訳 サトリ 2019年 スペイン語
金子みすゞ全集(限定版) JULA出版局 1984年2月28日
わたしと小鳥とすずと(全国版) JULA出版局 1984年8月31日 現在はフレーベル館発売