Center for Humanities, Science and Religion (CHSR)

人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター

ホーム 研究 人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター > News > 【報告】宗教倫理学会講演会「技術史的観点からみたAIの実情と神職の事情」

【報告】宗教倫理学会講演会「技術史的観点からみたAIの実情と神職の事情」

2026.03.15

2026年3月7日(土)14時より、本学大宮学舎清和館3階において、宗教倫理学会公開講演会「技術史的観点からみたAIの実情と神職の事情」が、当センターの協力のもと開催された。

那須英勝本学教授
井上善幸本学教授

那須英勝・井上善幸両教授による挨拶および趣旨説明ののち、才脇直樹氏(奈良女子大学副学長)による講演が行われた。講演では、AIをめぐる社会的理解と実際との乖離や、神職でありながら工学分野(ヒューマンインターフェース研究)に携わってきた自身の経歴について語られた。

才脇直樹氏

現在、AIはさまざまな分野で活用されており、とりわけ軍事分野などにおいては短時間での任務遂行を可能にするなど、その機能性が広く認識されている。一方で、AIはあくまで情報処理のための「ツール」であり、その活用のあり方は最終的に人間のリテラシーに依存するものであることが強調された。

また、AI研究の歴史についても触れられ、AIは1950年代以降、期待と停滞を繰り返してきたことが紹介された。従来のAIは人間が与えた知識をもとに動作するものであり、その限界が見えるたびにブームが下火になってきた。しかし近年のディープラーニングの登場により、大量のデータを取り込みながら学習する仕組みが実現し、情報処理の量と速度においては人間を上回る局面も生まれている。ただし、AIが人間の心理や判断を完全に代替する段階には至っておらず、その本質は依然として「人間が用いる技術」であると指摘された。

小田淑子氏

そのうえで、AIが人間を超えるかどうかという議論によって不安を煽るのではなく、この技術を社会の中でどのように活用していくのかを前向きに考えることの重要性が示された。AIをめぐる倫理的課題も多く残されており、宗教倫理学の視点からも今後検討を深めていく必要があることが強調され、講演は締めくくられた。

講演後には、小田淑子氏(元関西大学教授)によるコメントが寄せられた。小田氏は才脇氏の提言を受け、科学と宗教を対立的に捉えるのではなく、相互に対話しながら理解を深めていく姿勢の重要性を指摘した。

その後、会場とのディスカッションが行われ、多くの質問が寄せられた。特にAIと宗教との関係性に関する問いが多く挙げられ、活発な意見交換がなされた。議論の中で才脇氏は、宗教学や情報工学など各分野の研究が個別に進められている現状を踏まえ、今後はそれらを横断する文理融合的な研究の重要性が一層高まるであろうと述べられた。