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【報告】特別講演「龍谷大学からジェンダー平等をめざして」

2024.06.28

龍谷大学大宮キャンパスにて、2024年6月25日(火)にジェンダーと宗教研究センター嘱託研究員・安食真城氏(本学宗教部課長)による特別講義「龍谷大学からジェンダー平等をめざして」が開催された。

龍谷大学では「誰一人取り残さない」という世界共通の目標SDGsに、仏教の思想に根ざした「仏教SDGs」を掲げ、多様性を認め合う教育と研究を進めている。2017年には「性のあり方の多様性に関する基本指針」を策定し、「性的指向や性自認など、性のあり方は多様であり、これらに関する差別や偏見を解消し誰もが自分らしく安心して過ごすことができる大学や社会を目指すことは、すべての本学構成員が取り組むべき課題」と示した。

安食真城氏

そのような龍谷大学のジェンダー平等の実践に、積極的に取り組んでいるのが安食氏である。今回の特別講義では、LGBTQに対する時代的な認識の変遷や、ジェンダー平等に向けた龍谷大学の実践について説明した。

「性のあり方の多様性に関する基本指針」策定のきっかけとなったのは、宗教部が実施したアンケート調査である。その結果、回答者858人のうち130人が性的マイノリティー当事者を自認しているという回答があった。友達との何気ない会話やコミュニケーションのなかで、深く傷ついてしまった経験を持つ方が少なくないことも確認できたという。また、回答からみると性的マイノリティーだが、当事者意識はないという方が90人いた。そのようなアンケート結果を踏まえて、安食氏は「LGBTQや性のアイデンティティといったものは他人が決めるようなものではない。まずは本人がどのように認識しているのかを尊重しなければならない」と述べる。

 具体的な実践として、性別にかかわらず利用できる多機能トイレを「だれでもトイレ」という名称に変更したことを紹介した。それによって、学生たちのトイレに対する意見や議論も起こり、「みんなのキャンパストイレフォーラム」というオンラインイベントの開催にまで至った。現在も「オールジェンダートイレ」の設置・増設に向けて精力的に取り組んでいる。安食氏は「社会には、トランスジェンダーや同性愛者のなかの性的マイノリティに対する攻撃的な言説や排他的な慣習が溢れている。それは決して他人事ではなく、私自身も知らず知らずのうちに他者を傷つけているかも知れないことを自覚する必要がある」と強調した。

鍋島直樹教授からは、浄土真宗本願寺派の開教使チャプレンである宮木Lee啓輔氏の紹介があった。彼がチャプレンとして活動するなかで支えとなっていたのが、釈尊の「月愛三昧」である。「月愛」とは月の明かりのように暖かく、全てを受け止めてくれる仏の慈悲をいう。その意義をあらためて繙き、さまざまな偏見に気づいて、その人を大切にする仏教の平等の精神について語った。打本弘祐准教授からは、チャプレンは自らの生育歴を見つめ直すことが重要であり、自らの弱さや固定観念に気づくなかで、一人ひとり異なる苦悩を聞くことができるだろうと話した。院生の長尾菜摘さんは、ジェンダー平等とは、かぎりなく境目がないことであり、分け隔てなく自他を尊重することではないかと語った。

講義後、参加者や龍谷大学大学院実践真宗学研究科の学生を交えて活発な議論が行われた。今回の特別講義を通して、ジェンダー平等に向けた龍谷大学の歩みを知ることができ、社会課題について学び続ける事の重要性を再認識させられた。

集合写真

(文責:RA釋大智)