Center for Humanities, Science and Religion (CHSR)

人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター

ホーム 研究 人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター > News > 【報告】1/17シンポ「臨床宗教師研修の気づきと近未来」

【報告】1/17シンポ「臨床宗教師研修の気づきと近未来」

2024.03.05

【開催日時】2024年1月17日(水)15:30~17:00

【開催場所】龍谷大学本館2階講堂

【主催】世界仏教文化研究センター(RCWBC)応用研究部門

【協力】人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター(CHSR) 龍谷大学大学院実践真宗学科研究科

【概要】

本シンポジウムは臨床宗教師の未来や、臨床宗教師研修における学びを共有することを目的として開催された。

始めに、鍋島直樹教授から開幕の辞と、被災された方々へ哀悼の言葉を送られた。震災がもたらした悲しみと教訓をいつまでも忘れず、社会や地域が連帯することの大切さをあらためて考え、参加者たちと平和を願う時間になればという、鍋島教授の挨拶から本シンポジウムは始まった。

森田敬史教授からは「臨床宗教師・臨床傾聴士研修」養成教育プログラムの紹介があった。本プログラムは、宗教者として人々の苦悩や悲嘆に向き合い、病院や社会福祉施設、地域社会、被災地といった公共空間で実践可能な「スピリチュアルケア」と「宗教的ケア」を、理論と臨床実習、実習指導を通して学ぶことを目的とするものである。また日本スピリチュアルケア学会認定「人材養成教育課程」としても認められているため、認定臨床宗教師の資格だけでなく、「臨床スピリチュアルケア師」の資格認定も目指すことができるものとなっている。詳細は龍谷大学実践真宗学研究科のHPを参照していただきたい。(https://www.let.ryukoku.ac.jp/practical_shin/curriculum/rinsho.html)

基調講演は東北大学大学院文学研究科教授・谷山洋三氏から「臨床宗教師の現状と近未来」というテーマでお話を頂いた。宗教者が公共の場に関わることの意義や心構え、注意点、宗教に馴染みのない方々の感覚に寄り添うことが重要性を共有して頂いた。そして、これからの臨床宗教師について、課題も含めていくつかポイントを挙げられた。

一つは臨床宗教師のあるべき姿の追求、活動範囲の拡大である。臨床宗教師に付随する印象的な側面だけでなく、実際の活動に対する解像度を上げて、本当に必要とされる実践を模索することが重要であると述べられた。二つ目は教育プログラムの理想化である。社会の変化に即して、教育プログラムを常にアップデートすることも怠ってはいけない。三つ目は臨床宗教師の理論研究の推進である。スピリチュアルケア/宗教的ケアの理論化や、それに伴うエビデンスの提示、各教団における理論的位置付けもおこなっていく必要があると指摘された。

谷山教授からの講演を受けて鍋島教授は、臨床宗教師が組織化された意義について触れられた。組織として成立することによって、ガイドラインに則った活動ができるようになり、臨床宗教師の一人ひとりが自らの実践を振り返ることもできるようになったことは大きな進展である。

次に「京都府と臨床宗教師の連携」について報告があった。2013年から京都府では自殺対策の一環として、龍谷大学の臨床宗教師研修とも連携し、「くらしとこころの相談会」という無料総合相談会を開催している。弁護士や就労支援サポーター、保健所の方々などが一堂に会し、多職種連携でワンストップ支援を実施している。そこでは「公共空間で心のケアを提供するもの」として、宗教者が常に携わっている。そのような京都府との連携の事例を紹介しつつ、鍋島教授は、公共空間における宗教の役割について、大いなる仏様のはたらきにおまかせできるところ、究極的なこころの拠りどころになりうることであると述べられた。

その後、行われた研修生との振り返りでは、

・臨床宗教師研修を通して、自分自身の無力さをあらためて知らされた。この気持ちを原点として、これからも活動に取り組んでいきたい。

・被災地の「復興」について考えさせられた。街の復興と共に、被災された方々の心の復興に少しでも協力できればと思った。

・本プログラムでの研修は、臨床宗教師としてだけでなく、一僧侶としても大変勉強にもなった。

などといった、感想が寄せられた。

(文責:釋大智)