研究活動

研究活動報告

【開催報告】2021年5月25日(火)特別講義「緩和ケアのビハーラ僧の実際――臨床におけるスピリチュアルケアとは」を開催しました

あそかビハーラ病院の花岡尚樹氏を迎え、大学院生との意見交換による特別講義を行なっていただいた。

 

緩和ケアでは患者と家族を対象として、亡くなっていく患者の気持ちを聴く他、大切な方を失う家族の気持ちを聴くことが、基本的な考えであるとされた。また、緩和ケアにおける全人的苦痛の除去はあくまで手段に過ぎず、QOL(Quality of Life:人生の質)の向上が目的にあることを喚起された。スピリチュアルケアの説明では、スピリチュアルケアの議論にズレが生じており難解化しているとの認識を花岡氏は示された上で、スピリチュアルペイン以前に、スピリチュアリティを考える必要にあるとして、スピリチュアリティについて説明されている。

 

次に、スピリチュアルペインの説明では、村田久行名誉教授(京都ノートルダム女子大学)の「村田理論」を紹介されている。緩和ケア病棟が24時間面会可能である点もスピリチュアルケアとして、これが「村田理論」における「関係存在」を支えることに該当するとされた。つまり、家族が患者の人生を支えているという点に鑑みれば、その支えを奪わないよう面会時間を制限しないこともスピリチュアルケアになる。元より患者は、病院の規則に従って入院生活を送らなければならない為、自律が失われている状態にある。こうした病院の規則がスピリチュアルペインを生み出している中で、スピルチュアルケアを行なうことは矛盾であるとも強調された。

 

同院では、近隣のショッピングセンターへの買い物ツアーを実施しているが、買い物支援ではなく、患者の自律を支えることからスピリチュアルケアであると説明された。これは患者の自立が不可能となり、依存は増加しても、自律を支えることに繋がっていることが理由に当たる。次いで、スピリチュアルケアを実践する者は、普段自分の中に存在するスピリチュアリティに気付かなければ、他者のスピリチュアリティにも気付けないとされた。

 

患者の中には人生の危機に直面しながら、スピリチュアルペインとは成らない例についても説明されている。これは余命を意識した患者が、自分の人生における支えに気付かされたという話をこちらが聴かせてもらっている時点で、すでにスピリチュアルケアになっているというものである。講義冒頭において、スピリチュアルケアが難解化しているとの認識を示されたのは、最初にスピリチュアルペインを教えられる為、それに対するケアを過剰に考えてしまうことにあるとされた。私たちはスピリチュアリティを日常的にケアしながら生きている為、スピリチュアルペインを生じていないわけであるが、人生の危機に直面した際、支えが崩れて苦痛となったり、逆に覚醒して支えに気付き、むしろ意義深いものになるという両方の可能性を花岡氏は示された。

 

最後に、大学院生からの質問に対して真摯に答えられ講義を終えられた。

 

講義を行なう花岡氏(上段・左端)

(執筆:PD 日髙悠登)

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