研究活動

研究活動報告

2021年1月13日(水)新春シンポジウム「臨床宗教師研修の闇と光 2021年度臨床宗教師・臨床傾聴士研修募集要項」を開催しました

◎ 鍋島直樹&森田敬史「2021年度募集要項」と研修生紹介

 

本シンポジウムはオンライン開催により実施された。開催に先立ち、鍋島直樹(龍谷大学大学院実践真宗学研究科長)より開幕挨拶として、阪神淡路大震災発生から26年、新型コロナウイルス感染症発生から1年が経つことを述べた。そして、現在尽力されている医療者たちに対して感謝を述べた。参加者各自の宗教宗派の儀礼を尊重して、共に追悼した。

森田敬史(龍谷大学教授/実践真宗学臨床宗教師研修副主任)は、本シンポジウム開催日に本学ホームページにアップロードされた「2021年度「臨床傾聴士研修」募集要項」の概要について説明した。既存の臨床宗教師プログラムの受講生および臨床傾聴士の研修生が、共に仏教の死生観に学びながら人々の苦悩や悲嘆にこころを寄せて、生きる力を育むという思いで開講することを述べている。

 

 

鍋島直樹(右側上段) 

森田敬史(右側下段)

 

 

◎ 谷山洋三先生ご講演「臨床宗教師の現状と未来」

 

最初に、谷山氏は臨床宗教師の「これまでの歩み」を説明された。臨床宗教師は全国の様々な病院に勤めているが、一部の国公立病院では彼らに給与の支払いがされている為、一定の市民権を得て、公共性を担保しているという認識を示された。

次に、谷山氏は山本佳世子氏(天理医療大学講師)との共同研究によるアンケート調査を紹介された。調査結果では「コロナ下における活動」として、3点挙げられている。「・カフェデモンクの中止」では、カフェデモンクをオンラインで開催し、電話相談、メール、手紙などで対応した。「・病院、福祉施設でのボランティア活動の中止」では、常勤・非常勤であれば活動が継続出来たが、ボランティアとしてではスピリチュアルケアワーカーとはみなされなかった。これについて谷山氏は、活動内容ではなく活動形態が判断基準とされたことを不本意とされた。最後に「・教育プログラムの中止」では、龍谷大学と東北大学は様々な工夫を行なうことで実習を実施してきたとされた。

続いて、米国の仏教チャプレンのインタビュー記事を紹介されている。当記事にて言及された「わたしのみなもとである幽暗」(リルケ作/片山敏彦訳)に触れられた。その上で、現代は光の方に気持ちが集まっているが、それは人間の片方の面しか見ていないのではないか。闇にも大きな意味があり、そこからも学べ、何かのモチベーションに繋がるのではないかと谷山氏は述べられた。

「これからの「挑戦」」(昨年の新春シンポジウムのスライド)では、スピリチュアルケアと宗教的ケアの効果の理論化を行なうこと、および、各教団におけるスピリチュアルケアの位置付けと理論的基盤を構築することの必要性を紹介されている。前者では、経文聴取により悲嘆ストレス軽減効果を実証した谷山氏研究グループの研究等が紹介された。後者では、臨床宗教師を「くずかご付き歩く祭壇」というイメージとして表現された。これはつまり、「くずかご」が傾聴により様々な思いを受け止めること、「足」が苦悩を抱えている方たちの前に現れること、必要があれば祈りを媒介することである。

最後に「臨床宗教師の神学/教学/宗学」では、「くずかご付き歩く祭壇」のように各教団において理論化する必要性を強調された。それは諸宗教が協力するということのみならず、各教団においても仲間や理解者を増やすことに繋がり、臨床宗教師の活動を下支えすることになるからである。さらに谷山氏は、研究者がこのようなテーマに挑まれることに期待を寄せられた。

 

 

谷山洋三氏(右側上段から2番目の左)

 

 

◎ 質疑 研修生 吉水昌洋さん × 応答 谷山洋三先生

谷山氏の講演を受けて、吉水昌洋さん(龍谷大学大学院実践真宗学研究科2年生)は谷山氏へ質問と感想を述べた。

 

 コロナ禍という厳しい状況において、アメリカの病院チャプレンは医療者スタッフに対してケアを実施している。日本では医療スタッフに対して、臨床宗教師は何か出来ることはあるのか。医療と仏教の協働に対して、臨床宗教師は光と成り得るのかと質問した。

 

 これに対して谷山氏は、十全に出来ているとは言えないが、関西臨床宗教師会はオンラインによるカフェデモンクを実施していることを説明された。これは医療者限定ではないが、医療者にとっても話しを聞いてもらえるチャンスであるとされた。また、上智大学グリーフケア研究所の修了生たちを中心に、臨床宗教師を含めた同様の相談活動が行なわれているとされた。そして、日本臨床宗教師会では宗教的ケアのサービスを行なっており、YouTubeにおいて画像を公開しているが、これはお経とお祈りが聞けるものであると説明された。

 

◎ ドキュメンタリーフィルム「臨床宗教師研修 episode7」上映

 

 本動画は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響下にありながら臨んだ臨床宗教師研修について、研修に関する写真、音楽、イラスト、メッセージにより構成された30分にわたる記録である。

冒頭は、4月の自粛期間中に行なわれた教員・学生の活動についてダイジェストに紹介している。9月は全体実習が中止となったことを悔やむ気持ちを綴った。後期には、あそかビハーラ病院が実習生を受け入れたことに対して感謝の気持ちを綴りながら、本院の様子とスタッフの言葉を紹介している。9月20日は、オンライン広島平和研修「被爆寺院の悲しみと僧侶の役割」を行なった。爆心地から1kmの距離にあった超覚寺を和田住職(臨床宗教師研修修了生)が継いだこと、住職は被爆体験伝承者として特訓を受けているということを紹介した。9月29日は谷山洋三氏による「臨床宗教師の宗教的ケア」が行なわれ、谷山氏が述べた臨床宗教師が実践する際の言葉を綴った。続いて、12月4日は「オンライン研修 災害遺族の心のケアIn神戸赤十字病院」として、村上典子心療内科部長と増尾臨床心理士の両名の言葉を綴る。

次に、大学院生の佐々木正暁さん、柳田慶慈さん、吉水昌洋さん、社会人大学院生の新發田恵司さん計4人が登場した。彼らの研修を終えた感想と振り返りが、インタビューを交えて紹介する。彼らの登場後は、打本弘祐准教授、森田敬史教授、鍋島直樹教授も、同様に感想を述べている。

それらの終了後、次のメッセージが示された。「臨床宗教師はくずかごのように、相手の思いを受け止める。その時、くずかごは、一人ひとりの夢や愛情があふれる宝石箱になる。」/「永遠の願いにいだかれて、いのちは輝いている。不条理な世界に潤いを与えるような存在でありたい。」/「どんな闇にもきっと光がさしてくる。仏さまは見捨てることなく飽きることなく私を照らしてくださっています。これからのあなたを変わらずに応援しています。いかなる時も、大悲が共にあらんことを。合掌」

動画の最後には、研修生と教員との思い出がダイジェストに紹介され、出演者の研修生と教員による合掌と共に締め括られた。

 

 

ドキュメンタリーフィルム上映の様子

 

 

◇ 森田のコメント

 

記録として後世に残すことで、2020年が激動の時代であったことを振り返られると述べた。そして、宗教者は今の立ち位置から過去を振り返り、将来に繋げていく為には、前ばかりを見るのではなく顧みることが必要であることから、記録を採ることの大切さを強調した。

 

◎ 研修生代表 柳田慶慈さんの夢

 

柳田さんは、臨床宗教師研修で感じた夢と目標を次のように話した。今年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、実習等が難しいことが多々あったと述べた。その中で、臨床宗教師研修の実習受け入れが、あそかビハーラ病院のみであったことへ謝意を示した。実習では講義で学んだことが、どこまで生かされるのか不安に思うこともあり、講義では「傾聴」とよく言われるが、頭で理解して現場で行なおうとするが難しいこともあった。また傾聴することは相手と同じ場で、相手と共に寄り添う、現場を通して会話をするのみでなく、無言の時間もまた、寄り添うことであることに気付かされたとした。

また先輩のビハーラ僧からは、実習前にかけられた言葉を紹介した。それは「相手の人生に学び、相手の人生に教えていただく。この姿勢が大切である」。柳田さんは、私に何か力があるわけではなく、この姿勢を実習中に時々、思い出すようにしていたとした。私が知らない内に、相手の方をケアした部分もあるかもしれないが、自分自身が教えていただき、その姿に学ばせていただいたということ、いずれも実習を通して強く思ったと述べた。

本来であれば、臨床宗教師は僧侶が自然としていたことであり、現代では臨床宗教師という課程を通して身に付けることも少なくないと柳田さんは述べた。また、宗教者として相手の人生に寄り添わせていただき、共に生きさせていただく、一僧侶として、一宗教者として、これからもさらに自己を振り返りながら過ごしていきたいとした。そして、この活動を通して自坊に戻った後、門信徒の方に、このように接していきたいと考えていると決意を述べた。

 

 

柳田慶慈さん(下段・左)

 

 

◎ アドバイザリーボード 谷山先生の助言

 

谷山氏は、このような状況下で、あそかビハーラ病院において実習が行なえたことは、本当にありがたいことであったと述べられた。また、そこで出会った方々との思い出は、おそらく皆さんの一生ものの思い出になるのではないかと意見を述べられた。

谷山氏は東北大学のプログラムでよく言っていることであるとして、時々、天狗となって大切な経験を忘れてしまい、傲慢になることがあるとされた。それはある意味で、自分の成長が止まっている状況にあると言えるもので、それを避ける為には会話記録を作って振り返ることで、今の自分の課題が何かを考えてみるという助言を送られている。それが皆だけでなく、私たちの成長の機会になり、傲慢さを離れて謙虚になれるチャンスであると説明され、研修におけるお土産になるという考えを示された。

新春シンポジウムは、阪神淡路大震災に近い時期に開催される為、常に皆にはこの季節を思い出すチャンスがあることから、当震災とセットで記憶していただければと思うとされた。最後に、谷山氏はこれからの皆の活躍を念じているとして助言を終えられた。

 

 

谷山氏の助言を聴く研修生たち

 

 

◎ 謝辞 那須英勝教授

 

那須は本シンポジウム参加者の方々、および登壇者である谷山氏に対して、あらためて深く謝意を示した。谷山氏の講演内容を振り返りながら、これから臨床宗教師の活動の連携を谷山氏に繋げていただけるよう希望を述べた。また鍋島、森田、打本各教員、および今回のシンポジウム協力した本学学生に対して那須は謝意を示して、本シンポジウムは盛況の内に終えた。

 

(執筆:PD 日髙悠登)

このページのトップへ戻る