Center for Humanities, Science and Religion (CHSR)

人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター

ホーム 研究 人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター > News > 【報告】特別講義「SOGI/LGBTQ+をめぐる龍谷大学の取り組み」

【報告】特別講義「SOGI/LGBTQ+をめぐる龍谷大学の取り組み」

2025.06.11

 2025年6月4日(水)9:15−10:45、東黌210教室において特別講義「特別講義「SOGI/LGBTQ+をめぐる龍谷大学の取り組み」が開催された。講師は、本願寺派の僧侶でもある本学宗教部の安食真城課長が務められた。

 本学宗教部は、「建学の精神」の一環として人権問題への取り組みをおこなっており、安食氏はその中でもLGBTQ+への取り組みに尽力されている。本講義ではそれら取り組みについて、自身の経験を織り交ぜながら紹介しつつ、これからの社会そして仏教のあり方について提言された。

鍋島直樹氏(本学文学部教授)

 SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)とは性的指向・性自認のことであり性の多様性をあらわす。LGBTQ+とは、性的マイノリティの総称として用いられる語のひとつである。本講義では特にLGBTQ+の生きづらさや、それに対する気づきに焦点が当てられた。

 「LGBTQ+などの性的マイノリティと自認している人は、一クラスに一人か二人くらいは居るはずです」との指摘を受けた安食氏は、自分自身が気づいてこなかったことにショックを受け、そのことが性の多様性についての学びや取り組みをはじめる契機となったという。

安食真城氏(本学宗教部課長)

 LGBTQ+の当事者でない人、いわゆるマジョリティの人は、無意識のうちにマイノリティの人を差別、排除してしまっていることがあるという。

 その一例として「トイレ」がある。本学では過去に、「女子トイレに男性不審者が侵入」というポスターが学内に設置されたことがあった。無意識に書かれたポスターではあるが、実際には「男性不審者」という言葉が、トランスジェンダーなどの人に深刻な苦痛を与えてしまった可能性があるという。この出来事から、喫緊の課題であると認識され「龍谷大学における性的マイノリティの現状とニーズに関するアンケート」が学生・教職員を対象に行われた。アンケートの回答は任意であったが、858人の回答者のうち、130人が「当事者」と回答している。

 アンケートには、他にも自由記述欄が設けられていて、そこには「学生同士の何気ない会話に出てくる同性愛者をからかう言葉に胸が傷んだが、自身が当事者であることを悟られたくないために一緒になって笑った」や「家族にも性的マイノリティであることをカミングアウトできず、安心できる場所がない」という声が挙げられていた。このように、周りの人から無意識に発せられる言葉や会話によって傷つき、誰にも相談できずに生きづらさを抱えている人が、実はとても身近にいることに気づくことが大切だと力説する。

アンケートの結果が契機となり、龍谷大学では次のような基本指針を定めた。

・性のあり方に偏見・差別が生じないよう「不断の学習」と啓発に努める

・具体的な対応として本人の意思を尊重して合意形成を目指す

・トイレや更衣室などの利用について性自認に従って選択できるようにする

・個人情報の保護を徹底する。

 これらの基本指針のもと、本学ではさまざまな取り組みをおこなっている。トイレについてもオールジェンダートイレ(だれでもトイレ)の設置が進んでおり、より快適な空間の醸成を目指している。そのためには取り組みを続けていくことである。宗教部では引き続き、SOGI/LGBTQ+を含めた人権問題に取り組んでいくことが示された。

 安食氏は、「あれっ」と思った時に自分自身の常識を疑ってみる、そして意識してこなかったことに気づいた時に自ら行動してみることが大切ではないかと述べる。そして、そのまなざしは仏教者でも同じである。仏教者として人々と接する時にも、そのような視点を持ってほしいと述べ講演は締め括られた。

記念写真