センター長挨拶

仏教の救済観の意義を生かした研究を
めざしています。

センター長
人間・科学・宗教
オープン・リサーチ・センター
センター長 鍋島直樹

 龍谷大学は建学の精神に基づき、生きとし生けるもの全てを迷いから悟りに転換させたいという阿弥陀仏の誓願を依りどころとし、その願いに生かされ、真実の道を歩まれた親鸞の生き方に学び、「真実を求め、真実に生き、真実を顕かにする」ことのできる人間育成をめざしています。そのために「人間・科学・宗教」の三領域が融合する新たな知の創造に努め、平等、自立、内省、感謝、平和に結びつく研究に取り組んでいます。人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター(Center for Humanities, Science and Religion 略称 CHSR)は、それを具現化しうるセンターであり、諸科学との対話を通じて、生死の危機を超える智慧と慈しみを培い、仏教の救済観の意義を生かした研究をめざしています。

 龍谷大学人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センターは、2002年度から2012年度まで、仏教を機軸とした特色ある研究として、文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業および戦略的研究基盤形成事業に採択されて研究をつづけることができました。文部科学省ならびに学内外の関係各位にここに心から感謝いたします。

 グリーフ(悲嘆)は、すべての人がそれぞれのライフステージにおいて経験するものです。子どもから青年にとっての悲しみは、家族や自分自身の病気、失敗、ペットの死、親や家族との生き別れや死別、学校におけるいじめや差別、友達との別れ、失恋、卒業などによってもたらされます。成人から高齢者にとっての悲しみは、家族や自分自身の病気、家族や愛する者との死別、離婚、職場での孤立、挫折、失業、退職、事故などによる自己喪失などによって生じてきます。

 この世界に、死を超える真実、心の依りどころを求めている人がいるとすれば、重病や難病と生きる患者と家族、大災害に遭って突然に愛する人を失い、悲しみに暮れる家族、また自殺念慮者や自死で大切な人を亡くした遺族など、生死の危機に直面している人々でしょう。しかし私たちは、死に直面している人の心の声が、どれだけ聞こえているでしょうか。愛するものとの死別は受け入れがたく、後悔や悲しみを伴います。しかし、人は死別の悲しみを経験することを通して、亡き人から受けた愛情や、無常を越えた真実に気づきます。深い悲しみからこそ、他者や自然への慈しみも生まれてきます。別れと喪失の悲しみは、人に大切な何かを考えさせる機縁です。そこで本研究では、仏教・浄土教を機軸としながら、愛する者との死別に伴うグリーフサポートの在り方、救済観にについて研究します。

 誰しも本来独り生まれ独り死んでいく孤独な存在であるからこそ、一人ひとりのかけがえのない物語を尊重しあい、心の絆を育み、すべての存在が輝くような世界を築いていきたいと思います。この研究プロジェクトを通じて、さまざまな専門分野を究明する研究者自身の死生観を深めるとともに、他者のもつ多様な死生観に深く耳を傾け、慈愛と感謝を次世代に伝える死生観教育を樹立していくことを願っています。

 

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